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「福島原発事故についての緊急建言」

Peace Philosophy Centreというサイトで、「福島原発事故についての緊急建言」を読みました。元原子力安全委員長や元日本原子力学会会長といった、日本の原発推進の中枢にいた16人の専門家が連名で3月30日に政府に提出したものです。なぜ、この極めて重要な「建言」が大々的に報道されないのか理解できません。(この「建言」が出されたれ経緯については、Peace Philosophy Centreのこちらのページを参照してください。)

一読して感じたのは、第一に、いわゆる原子力村の指導者であったこの人々が、人間としての良心を失っていないということ。地球規模の災厄に拡大し、人類史を画するほどの事態となってしまった今回の事故に対して、自分たちのメンツや意地や利害をかなぐり捨て、真摯に向き合っていると思いました。そして第二に、真摯であるがゆえに、「建言」が放つ悲観的なトーンが今回の事態の深刻さを物語っているということ。専門家中の専門家として原子力開発を推進してきた人々でさえ、何一つ楽観的な見通しを語れないのです。

以下、「建言」全文を掲載します。

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福島原発事故についての緊急建言

 はじめに、原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします。

 私達は、事故の発生当初から速やかな事故の終息を願いつつ、事故の推移を固唾を呑んで見守ってきた。しかし、事態は次々と悪化し、今日に至るも事故を終息させる見通しが得られていない状況である。既に、各原子炉や使用済燃料プールの燃料の多くは、破損あるいは溶融し、燃料内の膨大な放射性物質は、圧力容器や格納容器内に拡散・分布し、その一部は環境に放出され、現在も放出され続けている。

 特に懸念されることは、溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できないことである。

 こうした深刻な事態を回避するためには、一刻も早く電源と冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることが唯一の方法である。現場は、このために必死の努力を継続しているものと承知しているが、極めて高い放射線量による過酷な環境が障害になって、復旧作業が遅れ、現場作業者の被ばく線量の増加をもたらしている。

 こうした中で、度重なる水素爆発、使用済燃料プールの水位低下、相次ぐ火災、作業者の被ばく事故、極めて高い放射能レベルのもつ冷却水の大量の漏洩、放射能分析データの誤りなど、次々と様々な障害が起り、本格的な冷却システムの回復の見通しが立たない状況にある。

 一方、環境に広く放出された放射能は、現時点で一般住民の健康に影響が及ぶレベルではないとは云え、既に国民生活や社会活動に大きな不安と影響を与えている。さらに、事故の終息については全く見通しがないとはいえ、住民避難に対する対策は極めて重要な課題であり、復帰も含めた放射線・放射能対策の検討も急ぐ必要がある。

 福島原発事故は極めて深刻な状況にある。更なる大量の放射能放出があれば避難地域にとどまらず、さらに広範な地域での生活が困難になることも予測され、一東京電力だけの事故でなく、既に国家的な事件というべき事態に直面している。

 当面なすべきことは、原子炉及び使用済核燃料プール内の燃料の冷却状況を安定させ、内部に蓄積されている大量の放射能を閉じ込めることであり、また、サイト内に漏出した放射能塵や高レベルの放射能水が環境に放散することを極力抑えることである。これを達成することは極めて困難な仕事であるが、これを達成できなければ事故の終息は覚束ない。

 さらに、原子炉内の核燃料、放射能の後始末は、極めて困難で、かつ極めて長期の取組みとなることから、当面の危機を乗り越えた後は、継続的な放射能の漏洩を防ぐための密閉管理が必要となる。ただし、この場合でも、原子炉内からは放射線分解によって水素ガスが出続けるので、万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要である。 

 事態をこれ以上悪化させずに、当面の難局を乗り切り、長期的に危機を増大させないためには、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、関係省庁に加えて、日本原子力研究開発機構、放射線医学総合研究所、産業界、大学等を結集し、我が国がもつ専門的英知と経験を組織的、機動的に活用しつつ、総合的かつ戦略的な取組みが必須である。

 私達は、国を挙げた福島原発事故に対処する強力な体制を緊急に構築することを強く政府に求めるものである。

平成23年3月30日

青木芳朗  元原子力安全委員
石野栞   東京大学名誉教授
木村逸郎  京都大学名誉教授
齋藤伸三  元原子力委員長代理、元日本原子力学会会長
佐藤一男  元原子力安全委員長
柴田徳思  学術会議連携会員、基礎医学・総合工学委員会合同放射線の利用に伴う課題検討分科会委員長
住田健二  元原子力安全委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
関本博   東京工業大学名誉教授
田中俊一  前原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
長瀧重信  元放射線影響研究所理事長
永宮正治  学術会議会員、日本物理学会会長
成合英樹  元日本原子力学会会長、前原子力安全基盤機構理事長
広瀬崇子  前原子力委員、学術会議会員
松浦祥次郎 元原子力安全委員長
松原純子  元原子力安全委員会委員長代理
諸葛宗男  東京大学公共政策大学院特任教授

元記事 http://blogs.yahoo.co.jp/tonko_hard/51593789.html
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