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シトロン

塹壕に逃げ込んだつもりが、そこはクレパスのように深い穴だった。身動きもできず、二人で細長く切り取られた空を見上げた。空は前からこう青かったかと【わたし】が尋ねる。一切が非現実的に感じられ、人の世界への関心を一瞬で失ったと言う。私は微笑んでうなずいた。乱暴に罵る声も人々の呻吟も渾然となって、今ここではただ遠雷のようだ。

穴の中で捻れて捩れて裏返り、どこがシェルでどこがコアなのか判然としない。そもそも、自我が何かを守ってきたのか、何かが自我を守ってきたのか。サーフェイスの展張力が低下し、【わたし】の顔かたちも崩れはじめているが、微かに笑顔であることは分る。ほほの赤みも。

満ちた月のように心も体も円満な人などいない、心優しい人にいくらそう言われても、私の固有の欠損を埋めはしないし、私の固有の歪みは矯正されない。【わたし】の異形であることに何の変化ももたらさない。このまま【わたし】の柔らかな重みを感じながら、ただ二人で青い空と流れる雲を眺めながら終わりを迎えるのも悪くないかもしれない。


元記事 http://blogs.yahoo.co.jp/tonko_hard/42378227.html
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